試験日程と併願
このように聞くと、片っ端から各自治体の採用試験を受けていけば、いつかは受かるのではと考えるかもしれませんが、ここで注意しなければならない点があります。
それは、全国的に一次試験の日程はある程度統一されているという点です。
具体的には、6月下旬の第四日曜日に行われる「A日程」、7月中旬の第二日曜日に行われる「B日程」、9月下旬の第三日曜に行われる「C日程」、10月下旬の第三日曜に行われる「D日程」の4つです。 消防本部によっては、独自日程で一次試験日を設けているところもあります。
このような事情から、おのずと受けられる自治体数は限られてきますが、3、4つ程度であれば併願して受験することが可能です。
では、一次試験の日程についてみていきましょう。
一次試験の日程
6月下旬の第四日曜日【A日程】
政令指定都市等では、6月下旬の第四日曜日に一次試験が行われています。この日程では、年度が替わってから3か月後には筆記試験があるため、試験勉強に費やせる期間が短くなります。 また、5月頃には、採用試験案内が配布され、5月中に申込期間が終了してしまう自治体も多くあります。
そのため、ゆったりと構えていては、受付期間が過ぎてしまったり、十分な試験勉強ができないまま試験に臨んだりといったことになりかねません。
このようなデメリットともとれる特徴がありますが、これはすべての受験生に共通して言えることです。 裏を返せば、このことはチャンスでもあるのです。 準備不足の受験生が多くいるため、早め早めに準備をしておけば、採用試験をかなり有利に進めることができます。
また、勉強スタートが出遅れてしまった人も、配点の高い科目を押さえて学習をすれば、短期間でも合格ラインに到達することは可能です。
>>勉強方法と学習プラン
いずれにしても、A日程の自治体受験を考えている場合、申込期間がいつからいつまでなのかということには注意してアンテナをはっておきましょう。
>>【A日程】消防採用試験日一覧
7月中旬の第二日曜日【B日程】
中核市や大卒区分の試験では、7月中旬に一次試験が行われることが多いです。政令市の一次試験から一カ月ほどが経ち、政令市で試験感覚をつかんできた受験生や試験準備がある程度整った受験生もいます。
試験日から逆算して勉強の計画を立て、しっかりと試験対策をして臨むことが可能な試験日程です。
梅雨が明け、厚さが厳しい時期となりますので、体調管理には気を付けましょう。
この日程では、政令市と比べ自治体数が多いため、どの自治体を受験するのかしっかりと比較検討し、申込をするようにしましょう。
>>【B日程】消防採用試験日一覧
9月下旬の第三日曜日【C日程】
9月下旬の第三日曜日に一次試験が行われる「C日程」は小規模自治体や高卒区分の採用試験が多いです。この日程の特徴は、他の日程に比べ一次試験の時期が遅いということ。つまり、それだけ勉強に費やす時間を確保しやすいということです。
また、このような特徴から政令市、中核市の採用試験を受けてきた、いわば試験慣れした受験生も散見されます。
なお、この日程では、筆記試験だけでなく体力試験も一緒に行われることがあるので、各自治体の試験案内を確認し、一次試験の内容を把握しておくことが大切です。
>>【C日程】消防採用試験日一覧
10月下旬の第三日曜日【D日程】
10月下旬の第三日曜日に一次試験が行われる「D日程」は、C日程と同じく小規模自治体や高卒区分の採用試験が多いです。この日程の特徴は、C日程と同じく一次試験の時期が遅いため、他の採用試験を受けてきた試験慣れした受験生が多くいます。
他市消防ですでに内定を勝ち取った受験生がいる一方で、まだ内定のない受験生や一発勝負の受験生もいるため、受験生の本気度が分かれやすい日程です。
>>【D日程】消防採用試験日一覧
その他の日程【独自日程】
基本的にほとんどの自治体の一次試験日は上記4つの日程のどれかに当てはまりますが、一部の自治体では独自の日程で一次試験が行われています。たとえば、東京消防庁の場合、Ⅰ類(大卒程度)の採用試験が5月下旬と8月下旬に、Ⅱ類(短大卒程度)の試験が6月下旬に、 Ⅲ類(高卒程度)の試験が9月下旬に行われています。
また自治体によっては、独自の日程で一次試験日を設定しているところもあります。
>>【独自日程】消防採用試験日一覧
追加募集
10月以降は追加募集をかける自治体もでてきます。 これを頭数に入れるのはナンセンスですが、どの自治体にも受からなかった時には、追加募集がかかっていないかチェックしてみてください。一次試験日程表
4月 | 上旬 | |
中旬 | ||
下旬 | ||
5月 | 上旬 | |
中旬 | ||
下旬 | 東京消防庁(Ⅰ類1回目) | |
6月 | 上旬 | |
中旬 | ||
下旬 | A日程、東京消防庁(Ⅱ類1回目) | |
7月 | 上旬 | |
中旬 | B日程 | |
下旬 | ||
8月 | 上旬 | |
中旬 | ||
下旬 | 東京消防庁(Ⅰ類2回目) | |
9月 | 上旬 | |
中旬 | ||
下旬 | C日程、東京消防庁(Ⅰ類1回目) | |
10月以降 | 上旬 | |
中旬 | ||
下旬 | D日程 | |
11月以降 | 上旬 | 追加募集 |
中旬 | 追加募集 | |
下旬 | 追加募集 |
併願
本気で消防士になりたいと思っている人は、できる限り多くの自治体を受けるべきです。 仕事の都合で休みが取れない人や、どうしてもこの自治体でないと嫌だという人はともかく、併願するに越したことはありません。併願のメリット
本命の予行演習になる
試験慣れしているということは、それだけで他の受験生より優位に立つことができます。 試験当日の流れや雰囲気、時間配分といった、試験勉強では得られない感覚を得ることができます。それだけで、心に余裕ができますし、実力も発揮しやすいです。スポーツに置き換えてみましょう。例えば、野球の練習をいくら頑張ってきても、一度も試合経験のしたことがない人がいきなり試合に臨んだら、思うような実力が発揮できないのも無理はないですよね。採用試験も同じです。本番前の予行演習は非常に重要です。
チャンスが増える
複数の自治体の採用試験を受けることは、それだけ合格のチャンスが増えるということです。 「数うちゃ当たる」というわけではありませんが、一つよりも二つ、二つよりも三つ…より多くの自治体を受験したほうが、確率的にも合格の可能性が増えますよね。特に消防の採用試験は、他の公務員試験に比べ採用人数が少ないため、一つの自治体だけでは心もとないです。可能な限り多くの自治体を併願することで、合格のチャンスを広げましょう。チャンスは多ければ多いほどいいのです。
併願のデメリットは?
併願による大きなデメリットはありませんが、強いて言うなら試験日程がタイトになるということでしょうか。例えば、政令市の一次試験を6月下旬に受け、その後7月下旬に本命の試験を受けるとします。 この場合、本命の7月下旬付近に政令市の二次試験が入ってくる可能性があります。 受験する場所が遠い場合、移動日等を入れると試験と試験の間がタイトになる場合があります。
しかし、このことは受験する自治体の優先順位を決めておけば、それほど大きな問題にはなりません。 本命の試験を最優先にして、そこに力を注げばいいだけです。 本命の試験に支障のない程度に他の自治体を受験し、日程的に無理が出てきたら、優先順位の低い自治体の試験は捨て、本命に力を注げばいいのです。
併願すると採用されにくくなる?
併願すると採用されにくくなるのでは…と心配する人もいると思いますが、そのようなことはまずありません。今の時代、就職活動でいくつもの企業を受けるのは当たり前のことですし、それは民間だろうが公務員だろうが同じです。
本命一本で臨んでいます!とアピールしたところで、あなたの思いが試験官に届くとは限りません。ほかにいい人がいれば、その人を採用します。
逆に、本命一本で他は受けていないとなると、この人はリスクヘッジ(起こりうるリスクを予測して、危険を回避すること)ができないのではという印象を持たれてしまう可能性もあります。
何度も言いますが、今の時代就職活動で複数の企業、自治体を併願するのは当たり前です。それが普通だということは採用する側も承知しています。 このようなことからも併願すると採用されにくくなるということはまずありません。
併願における面接時のポイント
面接の際に併願状況を聞かれた時には、他に受験している自治体を正直に答える必要があります。 調べればすぐにわかってしまうからです。聞かれるまでは、あえて自分から言う必要はありませんが、併願状況を聞かれた際には、受験している自治体名を正直に答えましょう。ただし、「○○市のほかに、××市消防と△△市消防を受験していますが、こちらの○○市消防が第一志望です。」 というように、必ず御市が第一志望であるという一文を加えてください。必ずです。 なぜ第一志望なのかその理由も明確に答えられるように、回答を用意しておいてください。
ここで間違っても「御市は滑り止めで受けています…」なんてことは言わないように。面接官もそんな人間を採用しようとは思いませんよね。
併願しているかどうかは調べればわかってしまうため、正直に答える必要がありますが、本命かどうかはあなたの気持ち次第です。嘘か本当かなんてわかりません。
本命であれ滑り止めであれ、今受験している自治体が第一志望だと言いましょう。そうすれば、面接官を不快にさせることもないですし、あなたの印象もよくなります。
併願状況を聞かれた際は正直に答えること。今受験している自治体が第一志望だと伝えること。なぜ第一志望なのか理由もこたえられるようにしておくこと。これが併願するうえでのポイントであり、合格するための秘訣なのです。