女性消防士は結婚・出産後も続けられる?
最終更新: 2026年7月
「消防士になっても、結婚や出産をしたら辞めることになるのでは」——女性が消防を志すとき、最も気になるのがこの点だと思います。
体験談やSNSの声はたくさんありますが、ここでは総務省消防庁の全国調査(令和7年12月公表)のデータをもとに、実態を数字で確かめていきます。
・令和6年度に自己都合で離職した消防吏員2,429人のうち、「出産・育児」を理由とする離職はごくわずか(勤続5年未満は0人)
・離職理由で圧倒的に多いのは「民間企業への転職」(勤続5年未満で35.8%)
・女性消防吏員603人の調査では55.1%が「定年まで働きたい」と回答
・一方で課題も。働きにくさの理由の1位は「女性専用施設が十分に整備されていない」(17.8%)
データの出典について
この記事の数値は、総務省消防庁が設置した「消防本部における女性活躍推進に関する検討会」の報告書(令和7年12月)によるものです。同報告書には次の調査が収録されています。
- ● 消防本部向け調査…全国720消防本部が回答(全本部)
- ● 女性消防吏員向け調査…全国の女性消防吏員603人が回答
- ● ハラスメント対策調査…無作為抽出した消防吏員800人中606人が回答(回答率75.8%)
体験談ではなく、全国規模の公式調査であることが、このデータの価値です。
離職理由の実態:出産・育児で辞める人はごくわずか
令和6年度中に自己都合(勧奨退職を除く)で離職した消防吏員は2,429人。その離職理由を勤続年数別に見ると、次のような結果でした。
勤続年数別の離職理由(上位)
| 勤続年数 | 最多の理由 | 出産・育児 | 婚姻に伴う転居 |
|---|---|---|---|
| 5年未満 (696人) | 民間企業への転職 35.8% | 0人 | 4人(0.6%) |
| 5〜10年未満 (557人) | 民間企業への転職 45.2% | 2人(0.3%) | 5人(0.9%) |
| 10〜15年未満 (329人) | 民間企業への転職 49.6% | 2人(0.6%) | 2人(0.6%) |
| 15〜20年未満 (181人) | 民間企業への転職 50.8% | 4人(2.2%) | 2人(1.1%) |
※消防庁「消防本部における女性活躍推進に関する検討会」報告書(令和7年12月)より。男女合計の数値です。
どの勤続年数帯でも、「出産・育児」を理由とする離職は0〜4人にとどまります。「消防士は出産したら辞めざるを得ない職業」という実態はデータ上ありません。
離職の主因はどの層でも民間企業への転職で、勤続10〜20年では約半数を占めます。これは消防に限らず公務員全体・社会全体の傾向に近いものです。
もちろん、この調査は男女合計の数値であり、女性だけを取り出した離職率は公表されていません。ただ、「出産・育児」が離職理由の主流ではないことは明確に読み取れます。
女性消防吏員の55%が「定年まで働きたい」
実際に働いている女性消防吏員603人への調査では、次の結果でした。
| 所属する消防本部で定年まで働きたいか | 回答 |
|---|---|
| 働きたいと思う | 332人(55.1%) |
| 働きたいと思わない | 271人(44.9%) |
半数以上が定年までの勤務を希望しています。では、「働きたいと思わない」と答えた271人の理由は何でしょうか。
| 定年まで働きたいと思わない理由(271人) | 割合 |
|---|---|
| 体力的に困難だと感じるから | 95人(35.1%) |
| 出産、育児、介護等、家庭と仕事との両立が困難だと感じるから | 62人(22.9%) |
| 他の職種に魅力を感じるから | 45人(16.6%) |
| その他 | 69人(25.4%) |
※同報告書「女性消防吏員活躍推進に関する調査(女性消防吏員向け)」より。
両立の困難さを挙げた人は22.9%。決して小さくない数字ですが、最多は「体力面」でした。24時間交替制で現場活動を続けるという職務の性質が、長期的な不安につながっていることが分かります。
働きにくさの理由は「設備」が上位
「現在の職場で働きやすさを感じていない」と答えた女性消防吏員314人に理由を聞いた結果です(複数回答)。
| 働きやすさを感じていない理由(314人・複数回答) | 人数 |
|---|---|
| 女性専用施設が十分に整備されていない | 56人(17.8%) |
| 災害派遣時の宿営用資機材(簡易トイレ・更衣用等)が不足 | 46人(14.6%) |
| 小型化・軽量化資機材が導入されていない | 43人(13.7%) |
| 休暇・休業が取得しづらい | 40人(12.7%) |
| テレワーク・フレックスタイム制度がない(利用しづらい) | 38人(12.1%) |
| 人事配置で出産・育児等の事情を考慮してくれない | 20人(6.4%) |
| 出産・育児等の支援制度がない(利用しづらい) | 17人(5.4%) |
※同報告書より。
上位を占めるのは施設・資機材といったハード面です。逆に言えば、これらが整っている本部を選べば、働きやすさは大きく変わるということでもあります。
なお、女性専用施設の整備率は全国で次のとおりです(令和7年1月1日現在)。トイレ61.6%、更衣室49.3%、仮眠室46.8%、浴室44.9%。平成27年度と比べていずれも約20ポイント上昇しています。
設備の状況は本部ごとに差があります。説明会や職場見学の機会があれば、仮眠室・浴室・更衣室を実際に確認しておくことを強くおすすめします。女性職員が在籍している本部かどうかも判断材料になります。
>>女性消防吏員の多い消防本部ランキングで、女性が在籍している本部を確認できます。
消防本部側の取組状況
各消防本部が「女性が働きやすい職場環境の整備」として実施している取組です(720本部への調査・複数回答)。
| 取組 | 実施本部数 |
|---|---|
| 女性専用施設の整備 | 620本部(49.7%) |
| 出産・育児等を考慮した人事配置の実施 | 365本部(29.2%) |
| テレワーク制度、フレックスタイム制度の導入 | 109本部(8.7%) |
| メンター制度の導入 | 62本部(5.0%) |
| 緊急参集時等に利用できる一時託児制度の導入 | 2本部(0.2%) |
| 実施していない | 59本部(4.7%) |
※同報告書より(N=1,248・複数回答の延べ数に対する割合)。
「出産・育児等を考慮した人事配置」を約3割の本部が実施しています。育児期に交替制勤務から毎日勤務(日勤)へ一時的に配置転換するといった配慮です。一方、託児制度やテレワークはまだこれからの段階です。
国はこの報告書で、テレワーク・フレックスタイム制度の導入、緊急参集時に使える託児制度の導入、休暇取得を相談できるメンター・相談員の配置などを各本部に求めています。今後さらに整備が進むことが期待されます。
キャリアアップ(昇任)についての本音
長く働くうえでは昇任も大きなテーマです。女性消防吏員603人の回答は次のとおりでした。
- ● 昇任したいと思う … 343人(56.9%)
- ● 昇任したいと思わない … 260人(43.1%)
さらに「昇任したい」と答えた343人のうち、管理職員まで昇任したいと思う人は137人(39.9%)でした。管理職までは望まない理由(複数回答)の上位は次のとおりです。
- ● 管理側ではなく、実務者として業務に従事したいから … 170人(23.6%)
- ● 上司の姿を見ていると昇任に魅力を感じないから … 141人(19.6%)
- ● 職務上の責任が重くなるから … 131人(18.2%)
- ● 仕事と家庭の両立が難しそうだから … 124人(17.2%)
「実務者として現場に関わりたい」という前向きな理由が最多である一方、両立への不安も17.2%を占めます。報告書はこの点について、管理職員のワークライフバランス推進、女性管理職によるメンター制度、育児休業からの復職者へのサポート体制の必要性を指摘しています。
ハラスメントの実態と対策
職場の人間関係も気になるところです。消防吏員606人への調査では、ハラスメントを受けたと回答した人のうち、種別の内訳は次のとおりでした。
| 受けたハラスメントの種別(69人) | 割合 |
|---|---|
| パワー・ハラスメント | 53人(76.8%) |
| その他 | 7人(10.1%) |
| セクシュアル・ハラスメント | 5人(7.3%) |
| 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント | 4人(5.8%) |
※同報告書「ハラスメント対策に関する調査(消防吏員向け)」より。
ハラスメントは依然として存在し、令和5年度中にハラスメント行為で懲戒処分等を受けた事案は176件・206人にのぼります。一方で対策も進んでおり、消防庁が示した対応策(相談窓口の設置、通報制度、研修等)は概ね8〜9割の消防本部が実施しています(令和5年1月現在)。
報告書では、相談窓口があっても相談されていない実態も指摘されており、今後の実効性向上が課題とされています。
まとめ:データから見えること
- ● 出産・育児を理由に辞める人はごくわずか。「出産=退職」という実態はデータ上ありません
- ● 女性消防吏員の55.1%が定年まで働きたいと回答しています
- ● 課題は設備(女性専用施設・資機材)と体力面。制度より先にハード面が挙がるのが消防の特徴です
- ● 約3割の本部が出産・育児を考慮した人事配置を実施。国もさらなる支援策の導入を求めています
- ● 職場環境は本部ごとの差が大きい。説明会や見学で実際に確認するのが最も確実です
不安がゼロになるわけではありませんが、「続けられないから受験しない」と判断するには、データはむしろ逆を示しています。気になる本部があれば、まずは採用情報と女性職員数を確認してみてください。
よくある質問
Q. 消防士は出産したら辞めることになりますか?
データ上、そのような実態はありません。令和6年度に自己都合で離職した消防吏員2,429人のうち、「出産・育児」を理由とする離職は勤続5年未満で0人、5〜10年未満で2人(0.3%)にとどまります。離職理由で最も多いのは民間企業への転職です。
Q. 女性消防士はどのくらいの人が長く働いていますか?
女性消防吏員603人への調査では、55.1%が「所属する消防本部で定年まで働きたい」と回答しています。「働きたいと思わない」と答えた人の理由で最も多いのは体力面(35.1%)で、家庭との両立は22.9%でした。
Q. 育児中の勤務はどうなりますか?
消防本部の約3割(365本部)が「出産・育児等を考慮した人事配置」を実施しています。育児期に24時間交替制から毎日勤務(日勤)へ配置転換するといった配慮です。制度の内容は本部ごとに異なるため、説明会や人事担当窓口で確認しましょう。
Q. 女性が働きにくいと感じるのはどんな点ですか?
調査では「女性専用施設が十分に整備されていない」(17.8%)が最多で、次いで災害派遣時の宿営用資機材の不足(14.6%)、小型化・軽量化資機材の未導入(13.7%)でした。制度面より設備面の課題が上位に来るのが特徴です。女性専用施設の整備率は全国でトイレ61.6%、更衣室49.3%、仮眠室46.8%、浴室44.9%です(令和7年1月現在)。
Q. ハラスメントは多いですか?
ハラスメントを受けたと回答した消防吏員のうち、内訳はパワハラ76.8%、セクハラ7.3%、妊娠・出産・育児休業等に関するもの5.8%でした。令和5年度中に懲戒処分等が行われた事案は176件・206人です。一方、相談窓口の設置や研修などの対応策は概ね8〜9割の消防本部が実施しています。
EXAM PREP
消防士を目指すなら、試験対策は早めに固める
教養試験、論文、面接、体力試験まで対策範囲は広めです。独学で迷う時間を減らしたい人は、まず大手予備校の講座内容を比べておくと動きやすくなります。資料請求はどれも無料なので、気になる予備校の資料を取り寄せて比較するのが最初の一歩です。
通学型(東京アカデミーなど)も含め、授業料と通いやすさ、学習スタイルを比べて自分に合う予備校を選びましょう。まずは無料の資料請求からで大丈夫です。
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