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消防学校ってどんなところ?

消防士の教育期間である消防学校。 新たに採用された消防士は、最初の約半年間、全寮制の消防学校へ入校を命ぜられます。
新人消防士を一人前の消防士に育てるための登竜門、初任教育というものです。

この初任教育では、消防のイロハを学ぶとともに、現場で必要な知識、技術を身につけます。 同時に、消防人として不可欠な精神力と体力、社会人としてのモラルやマナー等も養っていきます。

そのため、この教育期間中は厳しく過酷な訓練が行われ、精神面、肉体面で限界まで追い込まれます。
厳格な服務、規律のもとでの生活を強いられ、教官達も厳しく学生に接します。
そんなハードな半年間を経て、一人前の消防士になっていくのです。
このページの目次
  1. 消防学校で学ぶこと
  2. 最初の訓練は「訓練礼式」
  3. 消防学校の一日(例)
  4. どこの消防学校に入校するの?
  5. 入校時期、入校期間は?
  6. 給料は出るの?
  7. 消防学校が不安な人へ

消防学校で学ぶこと

消防士になると最初の半年間は初任教育を受けることになります。 初任教育では、消防士としての基礎基本を叩き込まれるのですが、限られた時間の中でやるべきカリキュラムがみっちり組まれています。

消防学校の授業は、座学と実科があります。
座学では、倫理や防災、建築等、公務員として必要な知識、消防士として必要な知識を学びます。

例:東京消防庁での座学科目



実科訓練

実科とは、実際に体を動かして学ぶ実技訓練です。
礼式訓練に始まり、ロープを使った結索訓練、はしご訓練、消火訓練等、実際の現場で活動する上で必要な知識技術を養います。


最初の訓練は「訓練礼式」

消防士として採用され、消防学校に入り、いよいよ火災戦闘や救助訓練といった消防士らしいことができる!と胸を踊らせて入校する人も多いと思いますが、現実はそう甘くはありません。

入校後に初任科生を待ち受けている最初の訓練は「訓練礼式」です。 この訓練の目的は、隊員を諸制式に熟練させ、その部隊行動を確実軽快にし、厳正な規律を身につけさせ、消防諸般の要求に適応させるための基礎を作ることにある。とされています。

難しい書き方をしているので、何を言っているのかわからない…と思いますが、消防の世界は階級社会であり、隊長の指揮のもとでの隊活動が基本です。 迅速かつ確実な隊活動を行うためには、号令に対し迅速確実な動作・行動をとる必要があり、また厳正な服務・規律を保つことが隊としての統制力の保持につながります。
このような礼式は消防だけでなく、警察や自衛隊といった集団での行動が求められる組織でも同様に取り入れられています。

訓練礼式では、「気を付け」、「敬礼」といった基本動作や号令による隊列行動等を学びます。 これらを通して、消防士としての規律や品位を向上させ、消防活動における迅速確実な動作及び厳正な態度を練成するための基礎を作り上げます。

気を付けの姿勢、敬礼の角度、服装の乱れ等々、細かなところまで非常に厳しくチェックされ、一人でも乱れている者がいれば、「連帯責任!!!全員腕立て伏せの姿勢をとれーーー!!!」と鬼教官の怒号が飛びます。 あれ?ここは軍隊ですか?と錯覚してしまうような非常に厳格かつ厳しい訓練が行われ、消防人として必要な規律や品位を徹底的に叩き込まれます。

入校して最初の一カ月程は、火災防御訓練や救助訓練といった消防士らしい訓練は行われず、この「訓練礼式」が実科訓練のメインとなります。 それが終わると、ロープを使った結索訓練、はしご訓練、火災防御や救助訓練といった消防士らしい訓練がはじまっていきます。



消防学校の一日(例)

消防学校での生活は、しっかりと時間で行動が決められています。 決められたルール中で、半年から10カ月程度の集団生活をします。
下記のタイムスケジュールは一例です。 学校ごとに若干時間は異なりますが、大まかな流れはどの消防学校も大体同じです。


6:00 起床、日朝点呼、体操

起床の鐘が鳴ると、すぐに校庭に出て、グラウンドに整列します。代表学生が指揮を執り、宿直の教官に対し、人員及び体調報告を行います。
点呼が終わると、次は消防体操です。消防体操というのは、イメージ的にはラジオ体操のようなもの。それに少し負荷をかけ消防版にアレンジしたものが消防体操です。初任教育では毎朝この体操を行います。


6:30 掃除

体操が終わると、次は掃除の時間となります。掃除は各班ごとに担当場所が割り振られており、指定の場所の清掃を行います。まじめにやっていないと教官に張り倒されます。

消防学校には桜の木があり、竹ぼうきで掃いても掃いても5分後には再び落ち葉が散乱している…という状況も。このようによくできた(理不尽な)カラクリのおかげで、初任教育において教官からの指導は避けて通れません。 概ね20分程で掃除を切り上げ、各班の班長は教官に清掃の終了報告を行います。


7:00 朝食

掃除が終わると、次は朝食の時間です。消防学校には学食があり、学生はそこで朝食をとります。この後は着替えや髭剃り、午前の授業の準備等やることがたくさんあるため、朝食に時間を割いている暇はありません。


8:00 通常点検

通常点検では、点検者である教官に対し整列し、服装や心の乱れがないかチェックを受けます。ここで少しでも服装や身だしなみに不備があると、教官から厳しい指導を受けることになります。
連帯責任で腕立て伏せやスクワットといった「罰勅」を受けることになるため、細かなところまで身なりを整え点検に備えます。 服のシワ、ネクタイの歪み、髭の剃り残し、靴磨き、表情、視線…本当に細かなところまで教官は見ているため、身なりに手を抜くことは許されません。心の乱れは、服装や態度に現れます。

点検を受けるときの姿勢は「気を付け」の姿勢です。号令とともに「気を付け」の姿勢をとりますが、その後は次の号令がかかるまで、何があっても決して動いてはいけません。これは、「不動の姿勢」とも呼ばれ、文字通り動くことは許されません。たとえ、くしゃみがしたくなっても、顔面に昆虫が止まろうとも…。何があっても揺るがない精神、これが消防吏員に求められる不屈の精神力ということでしょうか。 初任教育中は基本的に毎朝、通常点検が行われます。


8:30 座学

通常点検で、厳しい指導を受けた後は、午前の授業が始まります。午前中は座学が中心です。必要な教科書や筆記具を持って教室に向かいます。

日々のハードな訓練の疲れから、授業中はとてつもない睡魔に襲われますが、決して居眠りは許されません。授業中も背後から教官の厳しい目が光っています。


12:00 昼食

午前の授業が終わると、昼食の時間になります。時間割だけを見ると、一見余裕があるように思えますが、実際には、朝・昼・夕食の中で最も時間のない食事となります。

というのも、次の13:00から訓練が開始できる状態にしておかなければならないため、それまでに訓練準備をし、10分前には整列・報告体系を整え、万全の体制を整えていなければなりません。 そのため、昼食時には学生がわれ先にと食堂に殺到し、長蛇の列ができます。


13:00 実科訓練

午後からの授業は実科訓練が多いです。ロープ、三連梯子、放水訓練、救助訓練等現場で必要な知識・技術を体で覚えます。

ちょっとした気の緩みが大事故につながるため、教官たちも非常に厳しく指導します。連帯責任、罰勅は当たり前の光景です。


17:15 掃除

午後からの訓練でみっちり絞られた後は、掃除の時間です。朝の掃除と同様にしっかりと清掃を行います。


17:30 夕食、風呂

夕食の時間は3食のうちで一番時間的余裕があります。学生同士で雑談しながら食事がとれます。その後は20時までに入浴や洗濯、アイロンがけ、靴磨きといった身の回りのことを終わらせます。

消防学校には大浴場があり、そこで入浴します。アイロンや洗濯機は数が限られているため、毎日争奪戦となります。いかに周りの動きを見て要領よく行動できるかが重要になってきます。


20:00 自習

その日の復習や明日の予習を行います。


22:00 日夕点呼

廊下に整列し点呼を受けます。朝の点呼と同様に、宿直の教官に対し、人員及び体調報告を行います。


22:30 就寝

班室にて就寝します。班室には大部屋タイプと個室タイプがあり、消防学校によって異なります。


どこの消防学校に入校するの?

消防学校は全国に56校設置されています。各都道府県が運営する47校と、一部の政令指定都市が運営する8校です。

入校する学校は、基本的には各都道府県が運営する消防学校へ入校することになります。 一部の政令指定都市(札幌市、千葉市、横市浜、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、福岡市)では、独自に消防学校が設置されており、そちらに入校することになります。
都道府県の消防学校一覧
政令指定都市の消防学校一覧





入校時期、入校期間は?

初任教育の入校時期は、前期と後期に分けられます。前期入校は4月、後期入校は10月に入校しますが、大半が前期入校となります。 入校期間は約6ヵ月ですので、4月入校の場合は9月まで、10月入校の場合は翌年の3月までとなります。

入校期間中は消防学校での寮生活となりますが、土日は帰署日として所属に戻り家に帰るというところが多いです。 平日の外出は各学校によって異なりますが、初任教育では基本的に平日の外出は禁止としているところが多いのではないでしょうか。




給料は出るの?

消防学校に入校中に給料は支払われるのか疑問に思う人もいるかもしれません。 結論から言うと、入校中も給料は支払われます。 学校での扱いは学生ですが、身分はれっきとした消防吏員。各所属の命により、入校しているわけですから給料もしっかりと支払われます。

もちろんボーナスも出ますが、入校中は夜間勤務手当や時間外手当といった手当は発生しません。そのため、支払われる給料の額は基本給のみとなります。




消防学校が不安な人へ

先ほど消防学校が厳しいところだと書きましたが、実際のところどうなのでしょうか?
初任教育での半年間は実際、常に時間に追われ、常に声を張り上げ、教官に怒鳴られ、連帯責任で腕立てをして…というような日々が続きます。精神、肉体ともに限界まで追い込まれ、訓練が終わるころにはみんなくたくたになっています。

では、なぜそのような過酷な教育を受けるのでしょうか?
それは、消防という仕事が命を守るという使命を持っているからです。 消防士の仕事は、1分1秒を争う現場や、危険と隣り合わせの現場での活動を強いられることもあります。

そのような切迫した現場で、自分と仲間を守り、市民を助けるためには、知識・技術はもちろんのこと、強靭な精神と肉体も必要不可欠ですよね。
そのために、最初の初任教育では、厳しく過酷な教育を受けるのです。

自分には無理なのでは…と不安に思う人もいると思いますが、消防士になる以上誰もが通る道です。 また、決して自分一人ではなく、周りには同期がいます。 勉強が苦手な人、体力に自信がない人、要領が悪い人…いろいろな人がいますが、班員、同期で支え合って乗り越えていきます。

ハードな半年間の中で、同じ釜の飯を食い、同じ屋根の下で眠り支え合った同期とは、 教育が終わるころには強い絆が生まれているはずです。 こんな貴重な経験ができるのも消防の世界ならではですよ。